名作『戦場のメリークリスマス』4K修復版のネタバレあらすじと感想・レビュー

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名作には必ずと言っていいほど名曲がありますが、今作はそれに加えて奇跡のキャスティング!デヴィッド・ボウイ×坂本龍一×北野武。大島渚監督作品が2023年に国立機関に収蔵される予定のため、最後の大規模ロードショー公開となるそうです。ぜひ、この機会に大きなスクリーンと良い音響で味わいたい作品です。

この記事では、名作『戦場のメリークリスマス』を見たことはあるけれど、よく分からなかった、あれはどういう意味?などちょっとモヤモヤしている方向けに、4K修復版のネタバレあらすじと感想・レビューをご紹介します。

あらすじ

1942年戦時中のジャワ島、日本軍の俘虜収容所。収容所で起こった事件をきっかけに粗暴な日本軍軍曹ハラ(ビートたけし)と温厚なイギリス人捕虜ロレンス(トム・コンティ)が事件処理に奔走する。一方、ハラの上官で、規律を厳格に守る収容所所長で陸軍大尉のヨノイ(坂本龍一)はある日、収容所に連行されてきた反抗的で美しいイギリス人俘虜のセリアズ(デヴィッド・ボウイ)に心を奪われてしまう。クリスマスの日にハラは「ファーゼル・クリスマス」と叫んでロレンスとセリアズを釈放してしまう。それに激怒したヨノイは捕虜の全員を命じるのだが、周囲からの孤立を深める結果になり、葛藤に苦しむのだった。

出演・監督

監督:大島渚
脚本:大島渚 ポール・メイヤーズバーグ
出演者:デヴィッド・ボウイ 坂本龍一 北野武(ビートたけし) トム・コンティ ジャック・トンプソン 内田裕也 ジョニー大倉 室田日出男 戸浦六宏 金田龍之介 三上寛 内藤剛志 本間優二 石倉民雄 飯島大介 アリステア・ブラウニング ジェイムズ・マルコム クリス・ブラウン

名作『戦場のメリークリスマス』4K修復版のネタバレあらすじと感想・レビュー

印象に残ったシーンネタバレなし

まずは、ネタバレなしの見どころを3つをご紹介いたします。

 

カッコイイというより美しい!ボウイの美的センスが光る

ボウイの美しいブルーアイズ、シュッとしたスタイル、上品な立ち振る舞いに終始うっとりしてしまいました。

これは私の推測ですが、舞台は真夏で暑いはずなのに緑の薄手のマフラーをスカーフのように首に巻いていたのは、ボウイの発案では?と思うほど、おしゃれでした。

少年時代のシーンで学生服にカンカン帽を斜めにかぶっているのですが、それがまた絶妙な角度でかぶっていたので分度器で図りたくなるくらい、めちゃめちゃおしゃれでした。

美的センスや表面的な美しさはもちろん、セリフを発するだけでグッと吸い込まれるような、内から強烈に放つ魅力は凄まじかった。

  

恥よりも死を選ぶ。あの時代の日本男児が信じていた正義と生き様

武士道精神が色濃く残っていた頃の日本兵、というよりは日本人男児の生き様を見たような気がしました。

捕虜のヨーロッパ人側は肩に銃を持っていますが、日本人側は腰に日本刀を備えており、何か失態を犯すと腹切りすることで己の命をもって己の罪を償うという、今では考えられないことですが、当時は恥を抱えて生きるよりも尊厳を保ったまま死んだ方が、自分にとっても、また家族にとっても幸せであり、正しいとされていました。

この思想が正しいかどうかはさておき、日本人の粋や高潔な精神、謙虚であることを大切にしてきたルーツは、ここから来ているのかもしれないと感じました。

そう思うとメインの捕虜たちはイギリス人である設定も偶然ではない気がしました。

イギリスにも騎士道精神みたいなものが少なからず存在していて、どこか共鳴できる共感できるところがあったからこそ、築けた友情があったと思います。

デヴィッド・ボウイと坂本龍一、北野武とローレンスのそれぞれの友情や人としての繋がりを、名優たちの目線や表情、決して多くはない会話のやり取りで感じれるところも見どころです。

  

奇跡のキャスティング!デヴィッド・ボウイ×坂本龍一×北野武

やっぱりこの奇跡のキャスティングが実現したのは、大島監督だからこそ成し得たことだと思います。

名作には名曲あり、そして名優ありです。戦場シーンは一切ないのにも関わらず、戦争によって人生が狂わされる惨さを名優たちの目線や表情から十分に伝わってきます。

彼らがすでに持ち合わせている人としての魅力が役に厚みと広がりを持たせ、それぞれのキャラクターに人間味を感じられるところも見どころです。

 

【こんな人におすすめ】

  • 戦闘シーンは苦手だけど、戦争をテーマにした名作を見たい
  • デヴィッド・ボウイの魅力、美しさを堪能したい
  • 構図、色、光の使い方が素晴らしいショットの作品を見たい

【こんな人は向いてない】

  • 大規模で迫力ある戦闘シーンが見たい
  • 分かりやすい、見やすい、笑える作品が見たい

  

『戦場のメリークリスマス 4K修復版』/『愛のコリーダ 修復版』予告編

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印象に残ったシーンネタバレあり

 

ここからネタバレあり↓↓↓

まだ鑑賞していない方は、ここから完全ネタバレになりますので、ご注意ください。


ここからは印象に残ったシーンを3つ紹介します。

 

最大の屈辱!ボウイと坂本龍一のキスシーン

ヨノイ大尉にとっては、男色なんて言語道断であり、ましてやキスするなんてあり得ない!と頭の中では考えていた、言い聞かせていたと思いますが、言う易く行いは難しですね。

キスされた瞬間、腰を抜かしてうろたえてしまったのは、思いもよらなかった行動を目の当たりにした以上に、自分がセリアズに対して特別な想いがあることに気づいてしまった、その自分自身にも驚き、どうしたらいいか分からず、その場で壊れてしまったのだと思いました。

 

色彩が鮮やか!「まんじゅうも花も食ったが、花の方がうまいな」

セリアズは終始、反抗的で嫌味な言葉を吐き捨てるのですが、このシーンの嫌味たっぷりな表情は一番好きです。

修復版で色味が以前より鮮やかになったせいか、真っ赤なイビスカスの赤色と軍服の緑色のコントラストが際立ち、さらにボウイのオッドアイで睨みつける目力も合わさって、惹きつけられると同時に絵的にもとても印象的でした。

  

メリークリスマ。メリークリスマ、Mr.ローレンス・・・!

 邦題では「戦場のメリークリスマス」ですが、英題では「メリークリスマス、Mr.ローレンス」となるほど、まさに記憶に残る強烈なラストシーン。

↑↑メリークリスマスを2回書いたのは誤字ではありませんよ。1回目のメリークリスマスは昔酔っ払いながら言ったことを思い出し、2回目のメリークリスマスは上下関係なし、忖度なしの対等な関係の上で、いち人としての再会を心からの喜びや想いが込められていたのではないかなと思います。

今まではローレンス!とドスのきいた声で呼び捨てだったのが、「Mr」と敬意を込めてやさしく、満面の笑みで最後の挨拶をする。純粋な笑顔であればあるほど、この先待っている運命と相まって、とてもせつなかったです。

  

【あわせて読みたい】原作ではヨノイ大尉は生きていた!

原作ではヨノイ大尉は生きていたそうで、セリアズの髪の毛(=魂)を父祖が祀られている神社に、自らの手で、自らの詩と一緒に奉納したそうです。

春なりき。
いや高き祖霊(みたま)かしこみ、
討ちいでぬ、仇なす敵を。
秋なれや。
帰り来にけり、祖霊前(みたまえ)、我願うかな。
おさめたまえ、わが敵もまた。


引用:『影の獄にて』思索社

原作とあわせて読むと、よりヨノイ大尉の人間性や性格を知ることができそうで、今作をより深く理解できそうですね。

≫『影の獄にて』読んでみる

 

ちょっと裏話

  • ここだけの話
    ・頬にキスするシーンの微妙なブレは、機械の不具合による偶然の産物だった。
    ・ボウイは撮影に入る2年前からいつでもスケジュールを空けると伝えていた。
    ・教授(坂本龍一)は撮影が終わったあとに作曲を始めた。
    ・制作費が高額(16億円)になりすぎて、最終的には大島監督が借金までして完成させた。

 

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戦場のメリークリスマス Blu-ray

東京で上映中の映画館

109シネマズプレミアム新宿(※2023年4月14日〜終了日未定)

★ファーストデイ(毎月1日)は4,000円

2023年4月14日にNewオープンした最新プレミアムシアターということで、全てが最上級の設備で映画を楽しめます。

全席プレミアムシート、ハイスペックな映写設備に加え、全シアターの音響を坂本龍一氏が監修。映画の世界に没入いただける環境をご用意しました。

引用:109シネマズプレミアム新宿

新宿武蔵野館 (※2022年度)
★水曜日は誰でも1,100円
公開を記念して、『戦場のメリークリスマス』のポスター展が開催されていました。公開当時のオリジナルポスターが当初は展示されていたのですが、なんと盗難に遭った(現在は匿名で返却された)関係でレプリカの展示となりますが、十分見ごたえがあり、鑑賞後の余韻に浸れます。

アップリンク渋谷(※2022年度)
★水曜日は誰でも1,200円
オンライン上映も行っているので、緊急事態宣言中でも鑑賞できる有難い劇場です。(現在は行っておりません)

ヒューマントラスト有楽町(※2022年度)
★火・木曜日は1,100円(会員のみ:年会費1,000円)
★水曜日はレディースデイ1,200円

名作『戦場のメリークリスマス』4K修復版のネタバレあらすじと感想・レビュー のまとめ

名曲、名シーン、名セリフがありすぎて見どころ、印象に残ったシーンを絞るのは本当に難しかったです。書いているうちにどんどん出てくるので、表現としては安っぽくなりますが、スルメのような作品だと思いました。

見れば見るほど、考えれば考えるほど、見え方が違ってくる、いろんな解釈が生まれて作品に深みと味わいが出てくる。

今後スクリーンでは見ることはできませんが、何度も見返して、その時々で感じる想いを楽しみたい作品ですね。

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